
2025.04.24
投稿日:2025.04.24 最終更新日:2025.04.30
本当に心地よい家って、どんな家でしょう?
最新の機能も大切ですが、もっと自然体で、健やかに過ごせる空間を求めている方も多いのではないでしょうか。
そんな想いが、古くから日本の家を支えてきた「土壁」への関心に繋がっているのかもしれません。
この記事では、土壁の基本的な魅力や気になる点、他の自然素材との違いを分かりやすくお伝えします。
さらに、性能だけでは語れない五感で感じる心地よさや、長く愛せる価値について、京都で50年以上自然素材と向き合ってきた私たち片山工務店の視点も交えながら、一緒に考えていきましょう。
土壁の家って実際どう?基本的なメリット・デメリット
数字だけじゃない、土壁がもたらす「五感の心地よさ」
漆喰や珪藻土とはどう違う?他の自然素材との比較
コストや手間は?デメリットとの上手な付き合い方と京都での活かし方
「漆喰の家って素敵だけど、後悔するって話も聞くし…」。 家づくりで漆喰壁に憧れをお持ちになる一方で、そんな不安を感じていらっしゃるかもしれませんね。 ネットの情報を見ると「ひび割れ」「汚れ」「費用」など、気になる点も多く、迷ってしまうお気持ち、よく分かります。 この記事では、京都で50年以上に
目次
「土壁(つちかべ)」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか?
その名の通り、主役は「土」ですが、ただ土を塗るだけではありません。
これは、日本の気候風土に合わせて先人が生み出した、伝統的な壁づくりの技術なのです。
簡単に言うと、木の柱と柱の間に竹などで骨組み(竹小舞)を作り、そこに藁(わら)などを混ぜた土を、何度も塗り重ねて厚みを出していく壁のこと。
化学的な接着剤に頼らず、土・水・藁といった自然の恵みだけで作られます。
この自然素材ならではの「厚み」と、土が持つ性質によって、壁自体がまるで呼吸するように湿気を調整したり、熱を蓄えたりします。
だからこそ、昔から日本の家を暑さや寒さから守る、大切な役割を担ってきました。
まさに「生きた壁」とも言える存在なのです。
では、この自然の知恵が詰まった土壁には、具体的にどのような特徴や魅力があるのでしょうか?
私たちも京都で長年家づくりをしてきて、土壁という先人の知恵、自然の恵みが持つ力の大きさを実感しています。
それは単なる経験則ではなく、現代の暮らしにも役立つ確かなものです。
ここでは、土壁が持つ代表的な6つの素晴らしい特徴をご紹介します。
これらの特徴が複合的に作用することで、私たちの暮らしの中に具体的な「心地よさ」をもたらしてくれます。
これらの特徴が、どのように私たちの五感を通じて、深呼吸したくなるような空間をつくり出すのか。
数字や性能だけでは表せない、土壁の本質的な魅力を見ていきましょう。
土壁の家が心地よいと感じる大きな理由の一つが、その優れた「調湿効果」です。
壁自体がまるで呼吸するように湿気を吸ったり吐いたりして、部屋の湿度を快適な状態に保とうとします。
実験データによると、実際の建物の土壁で最大0.5mm程度の降水量に匹敵するの水分のやりとりが確認されています。
実際、ジメジメする梅雨時でも肌がサラッとしやすく、乾燥しがちな冬も過度な乾燥を防ぎ、しっとりとした空気感を保ってくれます。
さらに、土壁はその蓄熱性から夏の暑さを和らげ、冬は暖かさを蓄えてじんわりと放出してくれます。
急激な温度変化が少ないため、一年を通して穏やかな室温を保ちやすいのが特徴です。
エアコンのような即効性とは違いますが、まるで「陽だまり」や「洞窟」にいるような、身体に優しい自然な心地よさが得られるのです。
家の中の空気って、思った以上に大切ですよね。
土壁は、土や藁といった自然素材だけでできているので、シックハウス症候群の原因になるような化学物質(VOC)の心配がほとんどありません。
これなら、小さなお子さんやアレルギーが気になるご家族も、きっと安心して深呼吸できますね。
土壁の部屋に入ると、ふんわりと土の自然な香りがすることがあります。
人工的な香りとは違う、なんだかホッとする香りです。
それに、壁の小さな穴が、気になる生活臭を吸い取ってくれる嬉しい効果も。
見た目や手触りも、土壁ならではの魅力。左官職人さんがコテで仕上げた壁は、一つひとつ表情が違って、なんとも言えない温かみがあります。
光が当たると壁に混ざった藁がキラッと見えたり、自然なアースカラーが目に優しかったり。
触ると少しひんやり、でもどこか柔らかい。
そんな五感に響く心地よさが、土壁には詰まっています。
意外に知られていないかもしれませんが、土壁はある程度の「吸音効果」も持っています。
壁の厚みや仕上げにもよりますが、一般的な石膏ボードと比べると、特に中高音域の音を吸収しやすい特性があります。
これにより、室内の反響音が抑えられ、会話が聞き取りやすくなったり、オーディオの音も、よりまろやかに聞こえるでしょう。
完全に音を遮断する「遮音」とは異なりますが、外部の騒音を和らげ、室内で発生する音の響きを心地よく調整してくれることで、より静かで落ち着いた空間づくりに貢献します。
隣室の生活音が少し和らぐだけでも、日々のストレスは大きく軽減されるのではないでしょうか。
自然素材の塗り壁って、土壁以外にもいろいろな種類があります。
「漆喰や珪藻土とは、具体的にどこが違うの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、代表的な自然素材の塗り壁である「漆喰」「珪藻土」「砂壁/聚楽壁」「シラス壁」と土壁を比べて、それぞれの特徴と違いを分かりやすく整理しました。
素材 | 主な特徴 | 土壁との主な違い |
---|---|---|
土壁 |
バランス型 |
|
漆喰 | 美観・耐久型 白く美しい、防カビ、耐水性。お城や蔵で実績。 |
仕上げ材。合成樹脂添加の場合あり。蓄熱性は低い。 |
珪藻土 | 調湿特化型 非常に高い調湿性。デザイン自由度も高い。 |
仕上げ材。固化材が必要。蓄熱性は低い。 |
砂壁/聚楽 | 意匠重視型 和室の伝統的な仕上げ。上品な風合い。 |
仕上げ材。機能性は下地(土壁など)依存。表面が剥がれやすい。 |
シラス壁 | 高機能型 高い調湿・消臭性。100%自然素材を謳う製品も。 |
仕上げ材。比較的高価で、職人を選ぶ場合あり。蓄熱性は低い。火山由来。 |
もう少し詳しく、それぞれの素材を土壁と比べながら見ていきましょう。
他の自然素材塗り壁は「仕上げ材」としての役割が強いのに対し、伝統的な工法で作られる土壁は、しっかりとした厚みを持たせることができ、壁自体が構造の一部にもなりうる点が大きな違いです。
そして、その厚みがあるからこそ、熱を蓄えじんわりと放出する「蓄熱効果」も期待できるのです。
漆喰は、お城の壁などでもおなじみの、ツルッとした白い壁です。
土壁と比べると、カビに強く、水にも比較的強いのが特徴。
ただ、漆喰だけだと割れやすいので、多くの製品には接着剤などが混ぜられています。
また、土壁のように分厚く塗って壁の構造体にする、というよりは、表面の仕上げとして使われることが多いですね。
「漆喰の家って素敵だけど、後悔するって話も聞くし…」。 家づくりで漆喰壁に憧れをお持ちになる一方で、そんな不安を感じていらっしゃるかもしれませんね。 ネットの情報を見ると「ひび割れ」「汚れ」「費用」など、気になる点も多く、迷ってしまうお気持ち、よく分かります。 この記事では、京都で50年以上に
珪藻土は、湿気を吸ったり吐いたりする力が非常に高いのが最大の魅力。
色々な色や塗り方ができるので、デザインにこだわりたい方にも人気です。
ただし、珪藻土そのものは固まらないので、セメントや樹脂などで固める必要があります。
漆喰と同じく仕上げ材なので、薄塗りになることが多く、土壁のような熱を蓄える効果(蓄熱性)はあまり期待できません。
砂壁や聚楽壁は、和室でよく見かける、キラキラした砂粒が入った壁です。
独特の上品な風合いが持ち味です。
多くの場合、下地となる土壁の上に薄く塗られる仕上げ材なので、調湿などの機能は下の土壁頼み。
手で触るとポロポロ落ちやすいのが少し気になるところかもしれません。
シラス壁は、火山灰を原料にした比較的新しい素材。
調湿や消臭のパワーはかなり高いと言われています。100%自然素材を謳う製品もあります。
ただ、こちらも仕上げ材がメインで、土壁のような厚みや蓄熱効果は限定的。
材料費が少し高めだったり、扱える職人さんが限られたりすることもあります。
もちろん、どの素材にも良さがあります。
デザイン、機能、コスト、お手入れのしやすさなど、何を一番大切にしたいかによって、変わってきます。
ここまで土壁の魅力をお伝えしてきましたが、もちろん良い面ばかりではありません。
土壁を検討する上で、一般的に「デメリット」として挙げられる点も正直にお伝えする必要があります。
初期コストが高め | ビニールクロスなど一般的な壁材と比べると、材料費と左官職人の手間がかかるため、費用は高くなる傾向があります(一般的な壁仕上げの約7〜10倍程度が目安)。 |
---|---|
工期が長くなる場合も | 土を塗り重ね、それぞれの層を乾燥させる時間が必要なため、特に伝統的な工法(荒壁→中塗り→上塗り)では最低でも2ヶ月以上の養生期間を見込む必要があります。 |
ひび割れやメンテナンスの手間 | 自然素材であるため、乾燥収縮による細かなひび割れ(ヘアークラック)が発生することがあります。また、汚れた場合に水拭きができないなど、手入れに少し注意が必要です。 |
現代工法断熱性に劣る | 土壁単体の断熱性能は、現代の高性能な断熱材には及びません。そのため、断熱性を重視する場合は、外断熱など他の断熱工法との組み合わせを考える必要があります。 |
確かに、効率性や初期コストだけを考えれば、これらは欠点に見えるかもしれません。
しかし、私たちは少し視点を変えて、これらの「気になる点」と向き合うことで、むしろ豊かな暮らしや本質的な価値が見えてくるのではないかと考えています。
ここでは、私たちが大切にしている3つの視点をご紹介します。
確かに、土壁の家は最初の費用が少し高めかもしれません。一般的な壁仕上げの約7〜10倍程度が目安です。
でも、家づくりは建てた瞬間だけを見るものではありません。
土壁の家は、手入れをすれば本当に長持ちします。
土壁は湿気をうまくコントロールしてくれるので、家の大切な柱などが傷みにくいんです。
それに、化学物質の心配がない自然素材なので、家族みんなが長く健康に暮らせる、というプライスレスな価値もあります。
さらに嬉しいのが、光熱費の節約につながる可能性があること。
土壁が持つ熱を蓄える力(蓄熱性)のおかげで、冷暖房をガンガン使わなくても快適に過ごしやすくなりますし、環境への優しさも見逃せません。
目先の金額だけでなく、長く住む間の快適さ、健康、光熱費、そして地球への思いやり。
そんな「トータルで見た価値」を考えると、「高い」というイメージも少し変わってくるかもしれません。
これこそ、一時の流行ではなく、ずっと愛せる「ロングライフデザイン」の考え方だと思うのです。
土壁に細かなひび割れが入ることは、自然素材であるがゆえの性質とも言えます。
しかし、それは構造的な欠陥につながるものではなく、多くの場合、簡単な補修で対応できます。
むしろ、その補修を「手間」と捉えるのではなく、家族で一緒に壁のメンテナンスをする「イベント」として楽しむこともできるかもしれません
少し汚れたり、傷ついたりしても、それを味わいとして受け入れ、手入れをしながら共に時間を重ねていく。そうすることで、家への愛着はより深まっていきます。
完璧な状態を維持しようとするのではなく、時間と共に変化していく様を「経年美化」として楽しむ。
そんな、少し肩の力を抜いた、丁寧な暮らしのあり方も、土壁は教えてくれる気がします。
工期が長いことも、見方を変えれば、じっくりと家づくりに向き合い、職人さんとコミュニケーションを取りながら、完成を心待ちにする豊かな時間と捉えることもできるかもしれません。
土壁単体の断熱性能が現代の断熱材に劣るのは事実です。
しかし、だからといって土壁の家が寒いわけではありません。
大切なのは、土壁の持つ優れた調湿性や蓄熱性といった「良い点」を最大限に活かしつつ、「弱点」を他の技術で補うという考え方です。
例えば、建物の外側で断熱を行う「外断熱工法」と土壁を組み合わせてみる方法。
これにより、土壁の持つ蓄熱性を室内に活かしながら、高い断熱性能を確保することが可能です。
耐震性についても、私たちは「古くて新しい」発想を大切にしています。
単に壁を固くするのではなく、伝統的な土壁(特に竹小舞を入れた壁)が持つ、粘り強く揺れを受け流す性質を活かしながら、現代の構造解析に基づいた的確な補強を加える。
これにより、ただ強いだけでなく、しなやかさも備えた、本当に安心できる構造を目指しています。
そもそも土壁は、自然から生まれ、職人の手で形づくられるもので、工業製品のように均一ではありません。
自然素材と手仕事から生まれる壁は、一つとして同じものがなく、どこかホッとするような表情や温かみがあります。
私たちは、このデータだけでは測れない「心地よさ」こそが土壁の本質だと考えます。
だから、性能数値を追い求めるだけでなく、土壁ならではの良さを活かしつつ、現代の技術で弱点を補う。
そうやって、人が理屈抜きに「気持ちいい」と感じられる空間をつくること。
それが、私たちが考える、これからの土壁との良い付き合い方です。
日本の家づくりは、かつて「スクラップ&ビルド」が主流で、平均寿命が30年程度と短いことが問題視されてきました。
しかし、今、社会全体が持続可能性(サステナビリティ)を重視するようになり、住宅も「長く大切に使う」という価値観へとシフトしています。
そんな時代だからこそ、土壁が持つ本質的な価値が、改めて見直されているのです。
京都の街並みを見れば、築100年を超える町家が今も現役で使われている例は珍しくありません。
これらの建物が長く使われ続けてきた背景には、日本の伝統的な家づくりの知恵があります。
その知恵の一つが、まさに「土壁」の活用です。
土壁は、傷んだり古くなったりしても、上から塗り重ねて補修したり、一部を剥がして作り直したりすることが比較的容易です。
柱や梁といった構造材を土壁が覆うことで、火災や湿気から守り、建物の寿命を延ばす役割も果たしてきました。
そして、その役目を終えた時、土壁は化学物質を排出することなく、最終的には土に還ることができます。
まさに、土から生まれ、最後は土に還る。
そんな自然のサイクルに沿った壁なのです。
「モノを大切に、長く使う」という、今注目される考え方を、昔から実践してきた証とも言えますね。
家を「使い捨て」ではなく、世代を超えて住み継ぐ「宝物」として考えたとき、土壁はとても理にかなった素材なのです。
私たち片山工務店は、京都で50年以上、この地の気候や文化に深く根ざした家づくりを続けています。
目指すのは、住む人が心から「自然体」でいられ、京都の歴史ある街並みに美しく溶け込む住まいです。
京都特有の、夏の蒸し暑さや冬の厳しい底冷え。
実は、こうした気候にこそ、土壁は素晴らしい相性を見せてくれます。
壁が呼吸するように湿気を調整し(調湿性)、熱を蓄えて穏やかに放出する(蓄熱性)土壁の力は、まさにこの土地で快適に暮らすための先人の知恵。
私たちは、その力を最大限に活かす設計・施工を追求しています。
同時に、私たちは『そらどま』という独自の仕様もご提案しています。
これは、伝統的な土壁(湿式工法)が持つ優れた調湿性や蓄熱性といった「呼吸する壁」の機能を、現代の建材を用いた乾式工法で実現するものです。
『そらどま』の家は、「呼吸する壁」による優れた調湿性能と蓄熱性能、そして高い遮熱性能を有しており、一年を通して自然で快適な室内環境を目指しています。
お客様一人ひとりの想いに寄り添い、完全オーダーメイドで理想の家づくりをお手伝いする中で、伝統的な土壁の温もりを大切にしつつ、『そらどま』のような現代的な手法も取り入れ、自然素材の心地よさや京都らしい落ち着いた佇まいを追求しています。
快適性、見えない部分の品質、そして地震に強く長持ちする安心の住まいを実現し、完成後のアフターフォローも、信頼できる顔ぶれで責任を持って行います。
古くからの知恵を受け継ぎ、現代の暮らしに合わせて進化させる。
そして、京都という土地と、住まう人の「想いをつなぐ」。
そんな「自然に住まう」家づくりを通して、心豊かな暮らしをお届けします。
ここまで、土壁の基本的な知識から、その多機能性、五感で感じる心地よさ、気になる点への向き合い方、そして他の自然素材との違いまでお話ししてきました。
土壁の家の魅力は、自然との繋がりを感じながら、時間と共に愛着を深めていける「丁寧な暮らし」を叶えてくれる点にあります。
この記事が、あなたにとっての「本当に心地よい家」を考えるヒントとなれば幸いです。
私たち片山工務店は、京都の風土に合わせたオーダーメイドの家づくりを50年以上続けてきました。
自然素材への深い知識と確かな技術、そして何よりお客様一人ひとりの想いに寄り添うことを大切に、「本当に心地よい」「自然に住まう」家づくりを実現します。
「土壁の家」に興味が湧いた方、自然素材を活かした新築やリフォーム、古民家再生について具体的に考えたい方は、ぜひ一度私たちにご相談ください。
経験豊富な設計士が、あなたの理想の家づくりを心を込めてサポートいたします。
京都府拠点の株式会社片山工務店代表取締役/1969年京都生まれ。大阪工業大学建築学科卒業後、ゼネコンにて大規模建築の現場管理、阪神大震災復興を経験。1997年片山工務店入社、2004年より現職。設計・現場管理担当/一級建築施工管理技士、二級建築士、エコハウスマイスター保有/ 「不易流行」を信念に、伝統技術と新技術を融合させ、顧客一人ひとりの夢や想いを形にすることを使命とする。建築を通じた地域社会への貢献を目指す。
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